本心を口にすることがはばかられる世の中で、本心を口にする爽快さ。自分に無理でも憧れます。

本当は誰もがそう思っている

自分の欲求、たとえばあの男をモノにしたいとか、お金持ちになりたいとか…(略)そんなあからさまな欲求を少しも照れたりせず、堂々と主張する幼なじみについて主人公・萌が思うこと。

「本当は誰もがそう思っている。手に入れたいと望んでいる。けれども、それを口に出してしまったら、嫌われたり陰口を叩かれたり、時には軽蔑されたりする。だから、賢い生き方の手段として、ひっそりと胸の中にしまいこんでしまう。私は無欲に生きてます。私みたいな者が大それた望みなんか持つはずがありません、小さな幸せでいいんです、分相応でいいんです、形ばかりの謙虚なセリフを口走って。」

このフレーズを読んだ時、ドキッとしました。

自分にないものを手にした友人に「さすがねぇ。私にはとても無理だわ。」と言う時があります。

心から言った時もあるけれど、言ってみただけという時もあります。

言ってみただけの時の私はまさに「形ばかりの謙虚なセリフを口走って」るのだと思いました。

本当に手に入れたいものを口にすると、努力しなければならない現実がついてくる。それがイヤだから口にしない。

がんばってみたいけど、自信がない。

手に入らなかったときの失望を味わいたくない。

そんな弱い心の私を、「口にしてから考えなっ!」と背中をたたくように励ましてくれた言葉です。

参照元:肩ごしの恋人」(唯川 恵著/集英社)